大林宣彦監督作品。
アイドル映画、プログラムピクチャーの枠を超えて、
多くの人の心に残った、
不思議な少し恐ろしい作品。
( また、ある人たちにとっては、「何これ、学芸会みたい」となる場合も・笑 )
ひとつ書いて置きたいのは、
公開時に、
エンドロールで原田知世が映画の場面から突然唄いだした途端、
場内が大爆笑になったことがあったと聞いたことがあります。
せっかくのラストシーンが台無しだと激怒した人もいたと
聞いたことがあります。
どこでも誰もがそうなった訳ではありませんが、
あまりにも予想外に感じた場合にその反応は分らないでもないです。
この物語は、救いのない収束の仕方をするので、
何よりも原田知世のためのアイドル映画として、
最低限の体裁または救いを求めて、
あのような工夫を凝らしたのでしょうか、
しかしながら、
本編が上質であるだけに、
素直に戸惑った人たちが多かったということです。
NHK少年ドラマシリーズでは、もう少し綺麗な終わり方でした。
たぶん、原作もそうだったと思いますが、
深町の記憶を失った和子が何故だか思い出せない懐かしさを
ラベンダーの匂いに感じるという描写で終わります。
私は、子供の頃、それを観て、
切ない気持ちになったことを今でも覚えています。
ジュブナイルとしてそれで十分、名作になっているのです。
それを、
そういうレベルのせつなさでは終わらせず、
和子、吾郎双方に残酷とも言える初恋を描写したうえで、
同時に、
アイドル主人公に多少拙くともかわいく主題歌を唄わせるところが、
案外恐ろしい、常に表現が過剰になる、
一般には認知されていない、大林監督らしさと言える。
時をかける少女(2010年・谷口正晃監督)のパンフレットで、
大林監督は、
「深町君への想いを胸に秘め、
ゴロちゃんを忘れて空ろなこの世に彷徨い続ける和子」
「ぼくの映画では、ゴロちゃんがむしろ主人公でもある」
と言っています。
(*)
違う反応も勿論あったという覚書
大林宣彦監督が亡くなったんですね。83年の『時をかける少女』は『探偵物語』と二本立て公開でした。原田知世のアップで映画が終わったとき、みんな拍手してました。プレミアとか監督のトーク付きとかじゃない、ふつうの上映で鳴りやまぬ拍手を聴いたのは結局あれが最後でした。ご冥福を祈ります。
— 内田樹 (@levinassien) April 11, 2020
私自身の話。(新宿ミラノ座と時をかける少女)
http://inatt.tokyo/article/455739288.html
また、私が初めてこの映画を観た後のこと、
( 西武百貨店八尾店の八尾西武ホールで観た。
名前から想起するものより、
チープな展示場のような場所、
でも貴重な鑑賞体験をそこで得た。 )
それから、
このオープニングタイトルの曲が流れるといつも思い出す風景、
私にとって、印象深い思い出になっていて、
いつか書き残したいと思っていますが、
でも、日々記憶が薄らいできています。
20200425追記
2020年4月18日に、大林監督追悼として日本テレビで放映された際、
エンディングスタッフロールがカットされていたそうで、
当然のことながらそれに対する不満・批判が多く呟かれていました。
一方、その編集は大林監督自身であるとの話も目にしました。
作品がテレビ放映される際は、監督自ら再編集すると読んだことがありますので、
さもありなん。
監督は天国でにやにやしているに違いない。
大林版「時をかける少女」かつてのTV放映時には監督の意向でエンドロールをカットしたというし、常々映画館とTVで見るのとは別物と仰って作品によってテレビ版を自ら編集されてもいたし。フルバージョン見たければプライヴェートでしっかり見つめればよろし
— akari(eurus/) (@sachi_ameno) April 20, 2020
20200804追記
先日関東で放映された #時をかける少女 のエンディングカット大炎上に 天国の大林監督からメッセージが届きました😊✨
— SAKAMA (@sakaman0512) May 3, 2020
🔵 #大林宣彦 監督が本誌に明かしていた15歳の原田知世https://t.co/gtH6qSGY2u
yahooニュース 20200503
『大林宣彦監督が本誌に明かしていた「15歳の原田知世」』からの引用
https://news.yahoo.co.jp/articles/e65da57f71f8edac2b582c08ffe5249ac028c910
「映画の最後は、撮影現場で知世が、ミュージックビデオのように主題歌を歌っています。彼女の伸び伸びとした姿も、記録として残しておきたいと思ったんですね。
僕は映画のなかで、知世を大正ロマンチシズムの世界に閉じ込めてしまっていた。だから、『カット!』のあと、『さぁ、ふだんの、いつもの知世に戻ろう!』と言って、撮っていったんです。
地上波で最初に放送したとき、時間の関係もあって、この部分をカットしました。 すると、『監督がかわいそうだ』という投書が届いたそうです。いえいえ、僕がカットしましたよ。
エンドロールの映像は、知世のために作ってあげたシーンで、映画館で観てもらうためのもの。『テレビの前の人に観せるものか!』という思いで切りました(笑)」
大林監督は、「不思議な至福の映画だった」と振り返った。
(2013年7月29日のインタビュー)
覚書
・「ひとが、現実よりも、〜」と掲げる冒頭、映写機が回るような効果音、
これからあなたが観るものは「映画」ですよ、と。
・物語の最後は、1994年4月16日(土曜日)、
居ない孫のものを平成6年になっても買い続けていたのですね。
20080103追記
youtubeでNHK少年ドラマシリーズでの最後を再見することができました。
便利な世の中になったものです。
( 一時、NHKオンデマンドで一部を観ることができました。(20130323)
連続ドラマ タイム・トラベラー 筒井康隆「時をかける少女」より 最終回「タイム・エネルギーの謎」 )
https://www.youtube.com/results?search_query=%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%99%E3%83%A9%E3%83%BC
しかし、他にも経験がありますが、
子供の頃感動したものを今の自分の目で見て、
さほどのものとは感じないということを確認する、
という作業になってしまうことが往々にしてあります。
昔の認識、
昔の認識の記憶、
今現在確認ができる認識、
いったいどれが正しいものなのでしょうか。
( この映画のテーマのひとつと同じ感慨を持ちます )
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アニメ版 2006年の感想はこちら
http://inatt.seesaa.net/article/398821963.html
2010年版の感想はこちら
http://inatt.seesaa.net/article/398822364.html
新宿ミラノ座の閉鎖(2014) 荒野の七人と時をかける少女
http://inatt.seesaa.net/article/455739288.html
( 20060810初稿 )