「完全版」という言葉の選択は、この作者の趣味ではないと思いますが、
連載時のカラー原稿を使ったり、
いろんな口絵や次号予告イラストが収録されています。
・ハルヤマが漠統にひとりで殴りこみ、逃げるシーン。
真夜中の赤信号、耳からの出血、
モノクロの単行本でも、
信号や血の色を感じたものです。
それを実際に赤く示すとやりすぎている感も。
・一方、400FOURを、
ものすごく丁寧に書き込んでいることが、
カラーページでよく分りました。
こういうところが、普通のマンガではないところ。
人間だけでなく、モノを描いても、
それが特別な想いを帯びていることが
表現されています。
【紡木たくの原画を直に見てみたい、きっと凄いと思う】
・ホットロード
湘南の夜の冷え冷えとした国道
・瞬きもせず
山口県の地方都市の温かな陽射し
ホットロードなどとは異なる、よそよそしい、空虚感のある東京の街
自分がつまらない大人に「なっちゃった」と思ったのは、
紡木たくを読んでも感動しなくなったとき。
ホットロードは、結局、
子供がグレているだけの話じゃないかとか。
あるいは「おとぎばなし」。
素晴らしいが、
ある時期にのみ必要なもの。
実写とかリアルに表現したら、
魔法がとけてしまうもの。
でも、
久しぶりに読んでみて、
もう感情移入するようなことはないのですけど、
全然古びていなくて、
いつまでも残る名作なのだなと思いました。
(20061012記)
・ラスト近く、不自由な体で自転車を漕ぐハルヤマ。
幼稚園児にも劣る遅さに、一度はキレて、自転車を蹴っ飛ばす。
しかし、同じ時に、和希も見ていた夏の空を見上げ、
もう一度、自転車に跨り、黙々と進んでいく。
連載時には、空を見上げたハルヤマが、
手書きの吹き出しで、「ま いっか」と呟くのですが、
単行本ではその台詞はなくなっていました。
( 単行本の印刷では字が潰れてしまうからだと
想像しています )
そのことをよく覚えているので、
ここに覚書しておきます。
( 別冊マーガレット 昭和62年5月号 )
( 瞬きもせずのラストについて ホットロードの映画化について )
ホットロード 完全版全3巻 完結セット (集英社ガールズコミックス)