2006年11月03日

【ドラマ】 天下御免 1971年


 
BSでやっている、昔のテレビ番組を語る番組「週刊お宝TV」で、
天下御免という昭和46年のNHKの時代劇をとりあげていました。(20061103)

脚本が、早坂暁で、
音楽が山本直純、タイトル絵が黒鉄ヒロシ。

私はこの番組を観ていました。
中身はほとんど覚えていないのですが、
非常に型破りで斬新なスタイルだったことは、
子供の私にも理解できて、面白がって観ていました。

映像が第1話と最終回しか残っていない。
それも、主人公平賀源内を演じた山口崇が私的に
テレビ画面をビデオカメラで撮ったものだという。
しかも、最終回の最後の10分間が失われている。

( 山口崇が素材をNHKに提供したのに、
  NHKが最後の10分間をなんらかのミスで消したとのこと! )

映像が失われた最終回(1972年(昭和47年)9月29日放送)の最後がどういうものであったか、
早坂暁に取材して、説明してました。

私はこのラストを朧げながら覚えています。
とても強烈な印象を私に残したのです。

ストーリーとしては、
時代とかけ離れて型破りな主人公は、
江戸に居場所がなくなってしまう、せつない終わりを迎えるのですが、
一番最後に、源内たちは気球に乗り、日本を脱出しようとするのです。

そして、彼らがフランスに居たことを示唆して物語は終わります。
ドラクロアの民衆を導く自由の女神を模したカットで、
平賀源内がシルクハットを被り銃を抱えて自由のために闘う。
日本では駄目だったけど、
もっと大きな舞台で活躍しているという希望を見せたのです。


( シナリオでは、水前寺清子のナレーションは、
  「源内さんたちによく似た人物を見たという」となっていて、
  その伝聞調も子供心に胸にきた微かな記憶

  早坂氏のシナリオには、
  ドラクロワ云々のような指定や描写はなく、
  代わりに
  「『ラ・マルセイエーズ』が鳴りわたる。」となっていますが、
  劇伴の有無やそのメロディは、子どもの私には判別できなかっただろう。 )

( 「ドラクロアの民衆を導く自由の女神を模した」と
  認識し、記憶しているのも、少し不思議なことで、
  小学校低学年の私はこの時、すでに
  ドラクロワの絵を見知っていたのだろうか、
  ドラマの場面を先に知ったのだろうか。
  ドラクロワの絵が映り、
  シルクハットの男が源内になったカットに変化したという
  微かな記憶があるのだが、
  詳細なカット割りなどは覚えていないので、わからない。
  おそらく、このシーンでこの絵画の存在を覚えたのだろう。
  それだけ、強く印象に残ったということなのだろう。 )


と、いう私の記憶を記録したいというのが、このエントリーの作成動機です。 
放送当時、私は小学校低学年で、
しかも、当時のテレビドラマですから、
1度しか観ていないのに、

自分の才能が世の中で活きない主人公の無念、
しかし、舞台を変え、
生き生きと活躍しているのかもしれないという救い、
などのメッセージを感じとったことと、
そこで見た画がどんなだったか、覚えている。


類まれな作品とそれに出会えることの素晴らしさ。


( 浦沢直樹が、4歳のとき、
  手塚治虫の「地上最大のロボット」を読んで、
  勧善懲悪のむなしさを感じ取ったことを
  覚えていると言っていた。

  「なんて切ない話なんだろうって、
  4歳ぐらいのときにね、
  4年ぐらいしか生きていないんですけどね、
  いわゆる、勧善懲悪でいいものが悪いものをやっつけて、
  ドカンっていうものではなく、
  それって虚しいよねっていうメッセージが分かったんだね、あのとき」
    
  20230217放送 浦沢直樹の漫勉neo 手塚治虫スペシャル )




20130323追記

NHKアーカイブスのページで一部観ることができます。

http://cgi2.nhk.or.jp/archives/tv60bin/detail/index.cgi?das_id=D0009010167_00000 

(ニコニコにアップされている最終回の一部)


・殺そうとしているのは、このわしではなく、自由なんだよ。
・ねえ、どうしていい暮らしをしちゃいけないの。
・百姓、町人、漁師のいない国がはたして日本でしょうか。それが国でしょうか。



20200523追記

早坂暁の本、「天下御免」第3巻で、最終回の「さよならだけが人生さ」を読むと、とても面白く、ドラマをもう一度観てみたい思いが強まります。
特に、右京之介(林隆三)が、
「オレのうぬぼれを斬ったのよ」と呟くところなど。


20230318追記

川口のNHKアーカイブス へ出かけ、
最終回を観た。
期待を超え、滅茶苦茶面白かった。
画質の悪さに関係なく見応えがあった。

興味深いのは、
もともと私の記憶に残っているのは、
映像が失われている最後のシーンだけで、

それまでの部分は全然に記憶になく、
初見みたいなものなのだが、
今の目で見ても、
相当に魅力的なドラマで、

平成令和には見られなくなった真っすぐな主人公、平賀源内(山口崇)、
可憐なヒロイン紅(中野 良子)、
頼もしくかっこいい右京之介(林隆三)、
軽妙だが腕がたつ稲葉小僧(津坂匡章・秋野 太作)、

RPGのパーティのようなよく出来たチームです。

特に、稲葉小僧が軽妙でテンポのいいドラマの雰囲気を作っていると思いました。


再確認できたことは、

途中の物語内容は、
放送当時の小学生低学年の私には、
理解できなかっただろうということ、

それでも、
ラストシーンの主張を強烈に感じ取り、
いつまでも覚えているという、
俳優さんの演技など作品が放った力に感嘆すること、

ただ、
その映像は失われて、ふたたび観ることがかなわないこと。


( 昔のテレビ番組を語る番組「週刊お宝TV」を
  たまたま観ることがなかったら、
  いつか、忘れてしまっていたかもしれないこと )


奇しくも、2023年は、マンガ大奥がドラマ化され、
平賀源内を鈴木杏が演じるようですが、

あらためて、
明るく、真っすぐで、悲劇的な死を迎えることがなかった
本作の平賀源内が振り返られることがあっても
いいなと思いました。

三谷幸喜に頼んだら、熱く解説してくれるかも・笑













夢千代日記の感想
 http://inatt.seesaa.net/article/398821794.html



天下御免〈3〉 (早坂暁コレクション)
早坂 暁

天下御免〈3〉 (早坂暁コレクション)
天下御免〈2〉 (早坂暁コレクション) 天下御免〈1〉 (早坂暁コレクション)
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おまけ
子どもの頃、
義経=成吉思汗説に胸おどらせた時期があったことを思い出した。
この作品のラストに感動したことと、
共通するところがあるのかも。





さらにおまけ
 子供の頃、好きになったドラマ類を見渡すと、
 ちょっとふざけたような見せ方をしているスタイルのものを
 印象深く覚えています。

 それらは、この「天下御免」のほか、
 実相寺昭雄×佐々木守のウルトラマン34話「空の贈り物」等
   http://inatt.seesaa.net/article/398821761.html
 大林宣彦監督の「HOUSE ハウス」
   http://inatt.seesaa.net/article/398821810.html
 ピーマン白書
 などです。


ラベル:#これで育った
posted by inatt at 20:17| Comment(2) | ・感想など・TVドラマ・NHK | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Hosei様
コメントありがとうございます。

放送当時、私は小学校低学年で、
1度しか観ていないのに、
覚えていることがある。

優れた作品の持つ力なんでしょうね。

その自分の記憶を言葉に残したものが、
少しお役に立てたのなら、
嬉しいです。  

20151117
 
 

 
Posted by inatt at 2015年11月17日 05:40
はじめまして。
今日、TV朝日の「Qさま!!」で「民衆を導く自由の女神」が問題になり、シルクハットの男がドラクロワかもしれない、と言っていたのを見て「天下御免」の最終回を思い出しました。
このラスト、私もしっかり覚えています。当時(9歳か10歳でした)本気で「シルクハットの男は平賀源内なのか」、と感嘆したものです(笑)。
ググってみたのですが、この話はこちらのブログにしか載っていないようですね。NHKが映像残していないので、忘れ去られてしまうのか、と思うと、ちょっと寂しいです。
Posted by Hosei at 2015年11月16日 22:23
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