2010年03月22日

【ドラマ】 ちりとてちん 2007年

 
喜代美と草々は子供にどんな名前を付けたのか。



20170507追記

【創作落語「あの素晴らしき歳月に」】

2017年3月14日、徒然亭草若を演じた渡瀬恒彦さんが
お亡くなりになりました。
ご冥福をお祈りします。

今一度、草若師匠に思いをはせ、
こんなことを思いました。

このドラマは、
徒然亭若狭が、
202x年に、創作落語「あの素晴らしき歳月に」(*1)を創り、
それを映像にしているのだ、と。

だから、私たちがまだ観ていない、
喜代美のおかあちゃんとしての奮戦や、
師匠の落語を受け継いで伝えることにまつわる物語があるのだと。

そう考えるようになったのは、
創作落語をせよ、とは、
弟子若狭への草若師匠の贈物であり、
そのことについては、
受け継いだものを次へ渡していくという、
この物語のテーマのひとつが
まだ、決着していないように思えるからです。

草若「お前さんどんな事言う落語家になんのかいね
 第103回 https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2010015190SA000/




【まだ思い出になっていない】20190601追記

NHKの朝ドラ100作目をふまえたHPに、
貫地谷しほりさんのインタビューが掲載されました。

とても正直に吐露された心情に触れられる、
貴重で素敵なインタビューだと思いました。

( このページは署名記事ではありませんが、
  同様の内容である、
  ウィークリーステラ2019年6月14号の
  インタビュー記事では、
  取材・文/国友茜
  となっています。 )

・「ちりとてちん」は、まだ「思い出」になっていません。
・私は「ちりとてちん」に当たってラッキーだった。
・そのままの「和田喜代美」として見てもらえるように、普段の私を見てほしくないと思っていました。
・続編や映画化の話もありましたけど、共演者のみなさんが「やりたい」とおっしゃる中、私だけ何年も返事をせずにいて。ファンの方には謝りたいです。本当にすみません!
・「ちりとてちん」を客観視できない自分がいるんです。
・未熟な自分を見ていられないんだと思います。
18歳から34歳までの16年間を、10か月の撮影期間で登りきるのがすごく大変で、「ああすればよかった」と思うことがたくさんあるんです。
・(物語最終盤の展開について)すぐには付いていけませんでした。喜代美がどんどん成長して、私だけ置いていかれたような気がして、当時はすごくつらかったです。ここまで一緒に成長してきたけど、ここから先は私ひとりで大人にならないといけないんだ……と思えて。
・自分が喜代美をやりきれたのか、やりきれていないのか、ちょっと分かりません。
・「朝ドラ」は本当に、“人の成長”を描いているドラマなんだなと感じました。

「思い出にならない」という思いは、
時間が解決してくれるようなものではないことが伝わりました。



思うに、
貫地谷しほりさんにとって、
和田喜代美という役は、
聞いたことがあるような、
「この役は私そのものだ」とか
「私のために創られた人物だ」と
思えるようなものではなく、

(最初、オーディションの頃は、
 「この役は私じゃないかと思った」のに、)

「和田喜代美」の成長を演じることができたのか自信がない、
役が勝手に成長して役者を置いてきぼりにしたと思わせられた、
という、
特別な経験をさせられたものなのですね。

そのような体験は、
時間薬がいつか思い出にしてくれるわけでもない。

素晴らしい作品が時に帯びるのかもしれない、
恐ろしさというものに
触れたように思いました。

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朝ドラ100作 全部見せますを見てくださって ありがとうございました! チコちゃんは5歳なのに本当に色々知っていて凄かったです(笑) 収録の日は分かりませんでしたが『ちりとてちん』8位に選ばれたのですね。 今朝の朝ドラ100作の名シーンでは『ちりとてちん』のあのシーンが1位になったなんて。 本当に素晴らしい朝ドラに関われたのだなと終わって12年経つ今、改めて思いました。 昨日『なつぞら』の収録が終わった後、朝ドラ関係の取材だったのですが、そこでも色々思い出して感極まって泣いてしまいました。 それを見て泣いてる記者さんもおられて。 本当すみません。笑 ちりとてちんの事となると毎回こうなってしまう。 いまだ成長過程にある私B子。 そんな私を受け入れてくれる周りの方々。 あのドラマのおかげで気づきが多い毎日です。 写真はチコちゃ、、いや、キム兄と。笑 もう一枚は先日舞台観に行ったらキッチュさんと松永さんが。 みんなちりとてちんに出てくる愛すべき人たちです。 たくさん素晴らしい作品がある中でこうして今だ愛してくれて、ありがとうこざいます。 あぁ、観てない方にも是非観てもらいたいなぁ。 #朝ドラ #連続テレビ小説 #ちりとてちん #木村祐一 #松尾貴史 #松永玲子 #大好き #感謝 #皆さま #ありがとうこざいます

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渡瀬恒彦「お前さんどんな事言う女優になんのかいね」(*2)




2007年下半期のNHK連続テレビ小説。
いわゆる朝ドラで私が一番好きな作品です。

このドラマの内容は、

 可笑しな人間が、一所懸命生きとる姿は、ほんまにおもろい。
 その道中の陽気なこと!

テーマは、

 砥いで出てくるのは塗り重ねたもんだけや。
 悩んだことも落ち込んだことも
 綺麗な模様になってでてくる。

という台詞に表れている。

物語展開においては、
登場人物のエピソードや因縁が、
きめ細かに配置され、
上方落語を本歌取りしながら、
物語が綴られていきます。

第1週目に小浜の人間模様が語られ、
これに草若一門の人間模様を塗り重ねて、
それらにまつわる伏線を回収していく、
ひとりとしておざなりな登場人物がいない、
素晴らしい脚本(藤本有紀)です。

朝ドラでは、長編で、登場人物が多いがゆえに、
あの人はあの後どうなったんや、
とか
あの人は物語の都合上(ヒロインの都合で)ああいうことをしたな、
とか
感じることがよくありますが、

この物語では、
主人公に限らず、
誰にも「ここはあなたが主役」というシーンがあり、
登場人物全員を
「どーんと人生のど真ん中を歩かせた」
類まれな脚本だと思います。

( 例外が「あわれの田中」、
   嗚呼、彼も幸せになっていて欲しい・笑 )

塗箸、上方落語、親子や師弟の絆と伝統の継承、
そういう三題噺をこんなに上手に組み立て、
俳優さんたちの演技やら、
耳に残るテーマ音楽やら、
美術や照明など、
作り手の皆さんの素晴らしい仕事。

落語というのは、
話の中身をもう知っていても、
何度も聞いて楽しむものですよね。
この物語も、
何度観ても楽しめるドラマだと思います。

何度も何度も再放送していただきたいと思います。



【名前・名づけ】

このお話では、
名前(または名付け、親が子供に名を付ける)が
重要なテーマになっています。

人間ひとりひとりで生きていっているように見えて、
自分の名前は自分で決めたのではないんですよね。
自分の名前を決めてくれた人とつながって生きている。

(また、時には、つけられた名前に苦しめられる、
 A子、B子、小草若...)

最終週(第146回)に喜代美の名の由来が明かされますが、
それはこの長い長い噺のサゲのようなものと感じています。

さて、
喜代美と草々は、
自分の子供に、どんな名前を付けたのか。



【草若邸のデザイン】

ほぼ最終形と変わらない26週分のあらすじがあらかじめ作られていたそうです。
13週に、どこの壁が壊れるか、最初から決まっていた・笑 (*3)

( どこの壁が壊れるか、最終的に草若の家がどうなるか、
  あらかじめ決めていて、作りこみがなされている、
  ちりとてちんの美術デザインは、
  テレビ日本美術家協会が主催する「第35回伊藤熹朔賞」を受賞した。 )

そうなると、
最終週の展開を、いつどのようにヒロイン役の俳優に伝えたのか、
気になりますね。 




【糸子さんなしでは始まらない】

何から何まで高いレベルのお仕事でできあがっているこの作品ですが、
特に和久井映見さんが素晴らしい。
・草若を弟子の落語会に連れだしたのは誰か
・若狭に創作落語をやらせようと草若に気付かせたのは誰か
糸子さんは、
この物語最大のトリックスターであるだけでなく、
喜代美の最も重要な台詞の説得力の根拠になっていないといけない、
とんでもなく重要で難しい役柄なのですが、
観ている人にそこまで思わせずに
一見、軽やかに、
役目を十二分に果たしています。

(おかあちゃんの面白さは正典おとうちゃんのつっこみあってこそ、
  という部分もあります・笑。 )

貫地谷しほりさんが朝ドラの母親役に特別な想いを抱いているのも当然のことだと思います。




【視聴率】
こんなによくできたドラマが、
何故、視聴率低かったんでしょう。
という私も、最初は観てませんでしたけど。(笑)
視聴率がどんだけあてにならないかという見本。

初回放送時、宣伝の方向性として、
今までの朝ドラと異なる、
後ろ向きでヘタレな主人公、
ということを訴えていましたが、
個人的に思うのは、宣伝戦略の失敗かと・笑

主人公だけでなく、
登場人物のほとんどが、人生のあらすじを拗らせていて・笑
( 草若・小草若の親子関係、
  草々の長髪、  
  四草の崇徳院、
  秀臣の伝統塗り箸への想い、
  小次郎、正平…
  君らどんだけめんどくさいねん・笑 )
そのからみあいが
物語を盛り上げるのですが、
それをウリにしたドラマを観たいと思うかどうかは
別の問題・笑


私自身は、
2007年12月3日の「スタジオパークからこんにちは」に
和久井映見が出演し、
まだ第9週が終ったところなのに
糸子さん名シーンベスト10をやっていて・笑、
それがとても面白く、毎日観始めることになったのでした。

( また、スタジオパークといえば、
  2008年2月25日の加藤虎ノ介出演回も
  とても素敵な内容でした。
    http://inatt.seesaa.net/article/398822191.html


 )


・遠藤理史プロデューサーの述懐

(ちりとてちんは、)残念ながらヒットしなかったですが……。作っている僕らとしては、オンエアするその日までは「史上最高の朝ドラを作っている」と思っていたんですよ。「もう、これ以上のものはこれまで出たことがないはずだ」とスタッフ全員が思っていたはずです。で、ふたを開けてみると意外に数字(視聴率)は取れないし、それどころか下がっていく。「何が起きてるんだろう?」と思ったものの、原因は結局のところよくわからなかったですね。自分たちはあまりにも内側にいるので、「これがおもしろくないっていうことはないだろう」「もうちょっとどうしていいのかもわからない」という感じでした(笑)。

(引用元:「20%を割った『ひよっこ』が黒ひげを飛ばしてしまうのか?!常に「黒ひげ危機一発」の気分で挑むという朝ドラ舞台裏について、NHKドラマ部部長に聞いた【前編】
  https://otocoto.jp/interview/hiyokko01/ )  





【各週ごとの感想】

■第1週 「笑う門には福井来る」 (第1回〜第6回)

・オープニングをはじめ、画面が綺麗だなあと思います。

・毎回の最後に紹介される、ただいま修行中。
 第1回が若狭塗箸職人で、
 第151回(最終回)が落語家です。

・物語全体のテーマと小浜の人間関係が、
不足なく説明されています。


■第2週 「身から出た鯖」 (第7回〜第12回)

第7回で、主人公が
「私、徒然草だけは好きやから」と言っています。

また、喜代美の机の前にはセミの折り紙が飾ってあります。

主人公が大阪へ旅だつまでが、
物語全体の前ふり、
第12回の最後にメインテーマが流れ始めた瞬間の、
母を侮辱し父に殴られて家を飛び出すという
重い展開が洗い流され、
「ああ、ここから本格的に物語が動き始めるんだ」
と感じさせる、
一種のカタルシスが凄いと思いました。

( 母娘は、次週しれっと会ってますけどもね・笑 )


■第3週 「エビチリも積もれば山となる」(第13回〜第18回)

あわれの田中(徳井優)は、あんなに強烈な印象を残すのに、
この物語では珍しい一度しか登場しない(後への伏線がない)人物です。
それはもったいないことだと思っていましたが、
あれは、喜代美に、
「もうやめましょ、人の炒める、エビのせわた取る人生」
と言わせるために派遣された天使か妖精だと思うことにしました・笑

あわれの田中が登場する第17回は、
1シーンに9人もの演者が映っていながら、
それぞれの動きや台詞で、
何度も観ても飽きない面白さです。

芸達者な俳優さんたちの、まだ17回なのに息の合った演技を楽しめます。


■第4週 「小さな鯉のメロディ」(第19回〜第24回)

・朝ドラ主人公が恋に落ちたことを、辻占で示すシーンが、
とても鮮烈で、大好きです。


■第6週 「蛙の子は帰る」 (第31回〜第36回)

・今週のテーマを提示する月曜日(第31回)
 午後の散髪屋、鏡にしゃぼんで書いた4人の落語家の名前。
 それをタオルで拭うとき、
 喜代美の顔が泣いているかのように滲みます。

・磯七さんのお店に
 「明治大正落語集」「日本落語全集」という本が
 置いてありました。
 そしてラジオで落語を聴きながら仕事する。

・ひとりでは何もできないことに苦悩する草々。
 一人芸である落語を題材にしながら、
 仲間(兄弟弟子)がいないと、
 落語会もできず、師匠の芸を伝えていくことがかなわないことを
 描いています。

・物語のなかで、最も重要な家電製品、
 不器用なあなたの手となって働くハンドミキサー。
 ローン組んででも買わねばなりません・笑

・この週と次の週のあらすじ

「草原さんは販売員さんで、
 四草さんは中国料理屋さんやったけど、
 草々さんが崇徳院に戻って来てもろたから、
 落語会が寝床で赤穂浪士の討ち入りやの!」

それはともかく・笑、

・朝ドラは1日15分で週6日、1週分1時間30分
26週全151回で、37時間15分。
お勧めしても、なかなか通しで観ることは難しい。

とりあえず、この週だけでも観てもらうと、
このドラマの魅力が分かってもらえるのでしょうか。

このエピソードの下敷きとなっている「崇徳院」、
元々私も大好きな噺ですが、
この落語の物語内容に泣きの要素はありません。
しかし、
徒然亭草原役の桂吉弥さんが言ってましたが、
この週が放送されたあと、この噺を高座でやると、
うるうるしてるお客さんがいたとのこと。
「いやいやそういう噺とちゃいますねん」
それくらい感動的なエピソードになっています。

草原が落語に戻るまでの心情は丁寧に語られていますが、
四草の場合は一気に落として(笑)ます。
このような重複のない展開も綺麗だと思います。

また、
草原が崇徳院の歌の「とぞ、思う」の解釈を
語るシーンが好きです。
そして、
草原と喜代美や草々との会話の背後での
草原の奥さん(原田緑-押元奈緒子)の演技が趣深いです。

こういう脇役の素晴らしさもこのドラマの特徴ですね。

九官鳥の平兵衛は、四草と暮らしているので、
四草の話す言葉を覚えて喋っているわけです。
この物語を何度も何度も観るうちに、
平兵衛が「逃げた!」と話すのを聞くだけで、
四草の師匠に対する気持ちを
痛いほど感じるようになってきました・笑


■第7週 「意地の上にも三年」(第37回〜第42回)

第37回が全体を通して、私が最も笑った回です。
そもそも、朝ドラというものは、
毎回の最後のカットがヒロインのアップで
終わることが多いですが、
一世一代のどや顔で終わり、
その次のカットにもオチがあるという・笑。



第39回、寝床のシーンで、
お囃子の音が背景に流れていますが、
天神さんの行事かなんかの関連があるのでしょうか。

(落語会は、1992年12月14日月曜日です。)


第42回の草若が再び高座にあがるシーンが、
朝ドラ100作 ファン感謝祭 第1部 思い出の名シーンランキングで第1位になった。
(このドラマの数々の名シーンに投票されたものを
 これに集約したのではないかと勝手に思っています。)


正直に言うと、第42回を初めて観た時、
なぜ草若が落語をしようと思ったか、
あまり得心できませんでした。

この回を何度も観て、
なぜ、小草若の嗚咽しながらの落語に心打たれるのか、
考えているうちに、
草若は、ただ、息子のために、
落語をしようと席を立ったのだ、
と素朴な結論にたどり着きました。

この物語は難しい変わった心理でなく、
とても普通の誰にでもある家族への気持ちを描いています。


■第8週 「袖振り合うも師匠の縁」(第43回〜第48回)



「大根おろし対決」の劇伴「ぶいぶい言わしてましたよあの頃は」
本編で2回くらいしか使われてないように思いますが、
サントラの中で一番沢山聴いたです・笑

先輩の弟子たちが、
どんな風に弟子入りを許されたかを
あらかじめお話しておくのが、
このドラマのお約束です。

第44回の、
「自分がこの人ぞと思う落語家にです」という台詞が、
短いのに、気持ちがこもっていて好きです。


■第14週 「瀬戸際の花嫁」 (第78回、第79回)

年末年始の関係でこの週は2回しかありません。
いきなりの花嫁衣裳で、
私は「これは夢落ちや」と思いました。
今まで沢山の妄想シーンがありましたし、
箸休め的なお話かと思ったのです。
あまりにも唐突ですから。

しかし、このいきなりな結婚そのものも、
後の展開に使われていくので、
なるほどなと、
あとで思いました。  

また、
喜代美は、年季明け後の落語家としての始まりと、
草々の奥さんとしてのとしての始まりがほぼ同時なんですね。

( 喜代美、草々の結婚式は、1996年1月3日でした。 )


■第16週 「人のふり見て我が塗り直せ」

第90回
15分ワンシーン一発どり、一発OKの回。
カメラは5〜6台使っているのかしらん。
15分ワンシーンは、朝ドラの歴史でもいくつかあると思いますが、
登場人物の多さ(10人)では記録的かも。

(この回の演出はどなたでしょうか。
 wikipediaでは、この週の担当は吉田努となっていますが、
 貫地谷しほりのインタビューで
 井上剛ディレクターが演出していると
 思われる発言も見ました。)


■第18週 「思えば遠くへすったもんだ」 (第98回〜第103回)

この週は、
1999年の蜩の啼く頃、たった2日間のお話です。
(しかも月曜放送の第98回から土曜放送第103回冒頭まで同じ1日のお話)

物語の構成、俳優の演技などとても好いです。

また夕暮れの照明が印象深いです。

饅頭怖いが題材の週の、
最後の最後、糸子さんが草若師匠に問いかける台詞、
忘れられません。

主人公でない、ひとりの登場人物の人生の終わりを、
この週から、3週にもわたって細やかに描くことの意味、
人が生き、死ぬとは、
その人にとって、
周りの人にとって、
どういうことなのか、
いろいろ考えさせられます。


師匠が語る4人の弟子の思い出、
何度も繰り返し語られる若狭の悩み話、

この週に、若狭は自分の悩みを
何回説明したのでしょう・笑。

なんども繰り返し観ていると、
この台詞もなんだかせつなく感じてくるのです。
当人は必死でも、若狭の言い方ではなんだかおかしみも感じてしまう。
周りはみんなやさしくそれぞれなりに手を差し伸べている。
それでも、最終的には、
自分であがいて、なんとかしていくしかない。

( 最初に相談された草々は、
  若狭の噺が受けない理由を明確に述べており、
  それは、
  そもそも女性には古典落語は難しい、
  という、恐ろしい宣告なんですが、
  お話がすぐに草々自身の話に展開したので、
  うやむやになっている。 )

( 女性が、
  職業人や、あるプロフェッショナルになることを
  描くのは、朝ドラのひとつのパターンですが、
  そもそも向いてないことをやらせるという、
  このお話の奥底の恐ろしさ )


第103回は、とても好きな回です。
兄弟子たちは登場せず、
草若と若狭の対話が2度あります。

若狭が兄弟子たちのアドバイスを師匠に説明するシーン、
若狭は(弟子たちは)ほんまに落語が好きなんやな、
と幸せそうな草若。

「あの子には、まだまだ、
 教えてあげたいことが仰山あります」
と言っていたものの、
創作落語をせい、と若狭に言い渡す草若。

若狭に、師匠の落語を受け継いで伝えていきたいんです、
と言われたときの草若の表情、
弟子から師匠の落語を受け継ぎたいと言われ、
嬉しくないはずがない、
それでも、
弟子のもっともふさわしい進路を
師匠はきっぱりと言い渡したのでした。

第103回の若狭の落語は、
笑わせるシーンでありながらも、
その不自然さに若狭自身が
途中で噺を止めてしまう、
その落語がなぜ受けないのか、
なぜお客さんはひいてしまうのか、
説明しているものになっています。


■第19週 「地獄の沙汰もネタ次第」(第104回〜第109回)

第104回

冒頭、草若の後ろの床の間の掛け軸、
吉田兼好『徒然草』冒頭
「つれづれなるままに…ものぐるほしけれ」が書かれているそうです。

草々(青木崇高)、柳眉(桂よね吉)、尊建(波岡一喜)の言い争い、
些細なシーンですが、
それぞれの落語観の違いや
若さからくる発展途上の気負いが表現されている。

柳眉の「な、な、なんですとー」が好きです。

( 「鼻毛、座れ」
  「誰が鼻毛じゃ、出ててもええんじゃ」
  映ってないけど、3人面白く演じているはず。)


第105回

草原が、
「(落語は)究極の個人芸に見えて実は全く逆。聴く人がいて初めて落語になる」
といいます。

ひとり芸である落語を描いて、
仲間(兄弟弟子)の必要を描き、
さらに、観客の必要性まで説明しています。

人間、結局はひとりひとりで生きていくしかないにしても、
ひとりきりでは何もできないと考えさせられました。


■第20週 「立つ鳥あとを笑わす」 (第110回〜第116回)

草若師匠が四人の弟子へ地獄八景の稽古をつけ、
それを若狭が見守るシーンが大好きです。

私たちは、若狭の目を通して、
草若の稽古をつける様子を見ているような気持ちになり、
哀しくて、でも、幸せな気持ちになります。

若狭が自分にも教えてくれと駄々をこねますが、
若狭に突っ込みたくなります、
あんたは既にすごいもんを見てるやないの。

大草若が地獄八景を弟子に教えている、
その全体を見たのは、若狭だけなのですから。

草若の言うとおり、
いつか若狭が地獄八景をやるときは、
草原たち兄弟子からそれぞれ教わるのでしょうが、
草原たちも、自分がひとりでやるときは、
他の兄弟弟子たちと教えあうことになるはずです。

そういうふうに、徒然亭の伝統を、拡げ、伝えていくのは、
一門の絆によって成り立っているのだと、
実感させるエピソードです。

第111回の最初に病室の名札で、草若師匠の本名が分かります。
(草若の家の表札でも明らかにされていますが)


■終盤の物語展開

第20週の盛り上がりの山があまりにも高いので、
初放映時は、第21週以降、
視聴者として、どのように物語と向き合えばいいのか、
よくわからなくなったことを覚えています。

( ちなみに、
  新選組!では、一度思いっきりコメディに振る
  直虎では、ダメ押しにもう一度槍で刺す・笑
  とかして、
  脚本家がバランスをとろうとしてます・笑 )

この物語を繰り返し観るうちに、
草若師匠がいなくなってからのお話こそ、
この物語の本線なのだろう、
と思うようになりました。

気を付けることは、

喜代美の話、
A子の話、
正平の話、
子草若の話、
残った伏線すべて
が全部並行して語られ、
なおかつ、お互いがからみあっているところです・笑


■第22週 「聞かぬは一生の箸(はし)」

第125回
B子がA子を傷つけることもある、とB子が気づく。

( 誰かが知らぬうちに誰かを、
  草々が子草若を、
  正典が秀臣を )


■第23週 「終わりよければ滑ってよし」

第130回
喜代美が正平の気持ちに気づく。

徒然亭小草々(つれづれてい・こそ・うそ)

寝床には、?(はてな)の茶わん蒸しというメニューがあります。

 ( 各回で確認できる、他の寝床メニュー
    虎の子ポン酢
    嫁のヤキモチ(150円)
    咲咲サラダ
    さつま芋のなんば煮(250円)
    ひら天と青ネギの煮物(250円) 
    など )


■第24週 「蛇の道はヘビー」

「それがしんどい、それがおもろい」


■第25週 「大草若の小さな家」

第145回、
A子(和田清海/佐藤めぐみ)の箸作り。
主人公との対比として配置された人物の、
人生の転機が、
青空落語会という主筋の重要な出来事と並列して、
丁寧に、描かれます。
脇筋であるがゆえに、
総集編ではカットされてしまうこのシーンこそが、
朝ドラという長編ドラマの醍醐味だと思います。
とても好きなシーンです。


■最終週 「笑う一門には福来る」 (第146回〜第151回)

ひぐらし亭入口の提灯、天狗芸能の隣が磯七でした。
磯七さんは、少し特別な登場人物で、
落語を聞くお客さんを代表していると思うのです。
だから、初回に観たときに、ちょっと感激しました。

( 実際は、提灯は左から、
  小浜観光協会、魚屋食堂、OKTV、若狭塗箸製作所、
  天狗芸能、磯七、菊江仏壇店、おとくやん、寝床
  で、関係者全部入りです・笑 )

順ちゃんのおとうさんは寄席でも鉢巻きをしていました。
ということは、小浜から大阪へ移動するあいだ、
ずっとはちまきをしてたに違いない・笑。
もちろん、
喜代美の結婚式に乱入した時も
娘の結婚を許した時も、
鉢巻してました。
「鯖街道は男道」笑


最終週の松重さんには、眉間に皺がほとんどない・笑


【朝ドラ受けの起源】

第150回の放送直後、森本健成アナウンサーがニュース冒頭で
「明日の最終回もお楽しみに」と発言したというのは、
有名な話ですが、私はそれを見ていません。
朝の放送でなく、12時45分からの放送を録画して見ていたので。

でも、13時のニュースを担当していた登坂(とさか)淳一アナウンサーも、
あんた、たった今、ドラマ見てたでしょ、
と思わせるような表情をよくしていたことを、
記しておきます。
そして、どうもそれは、
観ている人の気持ちのつながりを意識した、
プロの技らしいと考えています。
どこかしら、このドラマに相応しいエピソードです。




(森本アナの受けについて)

第108回は、小梅(江波杏子)が残されるもののことを語り、
草若が「生きるのが怖くなくなった」回。

「立派な弟子が5人も居るんやでえ」



【最終回】

最終回は、多くのシーンが
今までのシーンの引用となっており、

そのことを強調するような、演技や演出、音楽であれば、
もっと印象が変わるかなと思うところがあります。

例えば、四草が、
いきなり迷い込んできた子供に、
なんのためらいもなく、
「やってみ」というのは、
若狭の弟子入りを許されたシーンや、
これまでの草若と四草との関わりを思い出させます。

ここは、劇伴が別のものになったり、
回想がインサートされるだけで、
雰囲気が変わるはずです。

この物語は、本当は、
延々と終わりなく続くことのできる構造を持っているけれど、

それをいったん打ち切るための、
最終回としての、演出・演技・音楽になっていると思いました。


この物語は、全体が主人公の回想形式であり、
そのことが物語の雰囲気構築の重要なポイントになっている、
作り手がそのように強く意識していると思うのですが、

メインテーマ曲の題名は、
「The Wonder Years 〜あの素晴らしき歳月(としつき)に〜」であり、
スピンアウトドラマ「まいご3兄弟」も回想形式です。
これは、かなり意図的なものだと思います。
はっきりとは判りませんが、
たとえば、物語全体が、
あの素晴らしき歳月に、という、喜代美の語る創作落語であるかのような。


最終回のナレーションで、
「私がおかあちゃんになって20年近こうたった」
というので、
喜代美は、50歳を超えたころ、
202x年から過去を振り返っているように
想像されます。

この設定は、どのような考えで、決められたのか、
それがわかるときは、くるのでしょうか?

続編は、2020年を過ぎてから、
たとえば、平成の終わりを振り返るようなかたちで、
作られるのかもしれませんね・笑。


どなたかの文章で、
ナレーションを、50歳を超えた喜代美として、
上沼恵美子が担当しているのは、
将来、喜代美が落語家に復帰することを暗示している、
という意見を読みました。(*4)
私は、考えもしていなかったので、大変吃驚したのですが、
暗示しているかはともかく、
そのような可能性も含めて、
いつか続編が作られることを楽しみにしています。

貫地谷しほりが、
一度続編製作を断っているという話もどこかで読んだ(*5)ように記憶しています。
また、
2015年11月に放送された、「大阪発朝ドラコンサート」でのインタビューで、
「(当時使っていた扇子を見るだけでうるうるするほど)
まだ思い出になっていない」
と語っていたのが印象的でした。

すぐに続編が作られなくとも、
たとえば40歳代の貫地谷しほりの演じる喜代美も大変期待できるので、
気長に待っています・笑
または、喜代美の娘が主人公で、喜代美がおかあちゃんを演じる、
ちりとてちんUとか。 


  
20140405追記

ちりとてちんの2回目の再放送が終わりました。
新たな気づきもあって、
朝ドラは、半年かけて観ることに意味があると思いました。
また、何年後かに、再放送してほしいですね。
そのときの自分が新たに何を感じるのか楽しみです。



【朝ドラ100名シーン1位】

20190331追記

20190329(金)に放送された、
「朝ドラ100作! 全部見せますスペシャル〜歴代ヒロインがチコちゃんに叱られる!?〜」
の番組内で発表された あなたの<イチオシ朝ドラ>投票のランキング では、
8位(9,267票)でした。
予想してたよりは下で、少しもやっとしたのですが・笑、
翌日の、朝ドラ100作 ファン感謝祭 第1部 思い出の名シーンランキングでは、
第42回の草若師匠のシーンが第1位になり、大満足しました・笑。
(平清盛でもいつかこんなことがあれば好いのですが・笑)

番組で得た新情報としては、
貫地谷しほりが、
大阪弁の落語を覚えるのが大変で、
台本を見ている余裕がないくらいやらないといけなかったと
述懐していましたが、
チコちゃんが、
「ただでさえ、押して(定刻より遅れて)くるしね」と
暴露してました。
本人は、「そうでしたっけ?」と
とぼけていました・笑
(チコちゃん「めちゃめちゃおしてたやん」)

朝ドラヒロインのマイナス情報の暴露は珍しいですね・笑


「ちりとてちん」は朝ドラ第77作目




・ちりとてちん外伝 まいご3兄弟の感想
 http://inatt.seesaa.net/article/398822247.html




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■ちりとてちんメモリアルブック 2008年 8/25号について
 
NHKステラの臨時増刊

ドラマちりとてちんが、

作った人たち
その周辺の人たち
観た人たちにとって、

特別なものであることを
形にした素晴らしいお仕事。


20190718追記
ファンブックが作られたときの話
https://www.nhk-sc.or.jp/saiyou/message/2014/message04.html
(上記URLからの引用)
・ステラはNHKの番組広報誌なので、放送が終わった番組の別冊を出すという前例はありませんでした。
・売れる保障もなく、何度も「難しい」と諭されましたが、私自身は作品の魅力を信じていましたし、ドラマファンの方の要望に応えたくて、何とか企画を通してもらいました。
・諸先輩方、番組スタッフ・出演者の皆さんの協力で本が完成したときの感動は、今も胸に鮮やかです。



ちりとてちんメモリアルブック 2008年 8/25号 [雑誌]

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和田正典の鋭い眼光と共に即座に繰り出される突っ込みだけを集めたサイト
 http://www.masanori-tsukkomi.com/

ロケ地ガイド
 http://loca.ash.jp/show/2007/a2007_chiri.htm





(*1)オープニングテーマの曲名





サウンドトラックは、曲はもちろんのこと、曲名も趣を感じます。

「きよみのきは「きぼう」のき」
「きよみのきは「きっと何か悪いことが」のき」
「きよみの「き」は「きっといいことが」の「き」」

「幸せになりたい」
「幸せになりたい、のに」
「幸せになりたい、だけなのに。」

「ひとりじゃないよ」
「ひとりじゃないよ、ひとりじゃなかったよ」



(*2)2007年のスタジオパークでの渡瀬恒彦のコメント





(*3)以下のページからの情報


(遠藤理史チーフプロデューサーのNHK放送博物館愛宕山ホールでの講演会内容)
http://blog.livedoor.jp/p_s_y/archives/51770206.html
http://ushi3.blog22.fc2.com/blog-entry-785.html

(*4)連続テレビ小説読本というムックのなかの情報。


(*5) *4と同じ。



連続テレビ小説読本 (洋泉社MOOK)
貫地谷 しほり 国仲 涼子 北林 早苗 渡辺 えり 川崎 亜沙美 桂 吉弥 森田 直幸 岡田 惠和 山本 むつみ 長沖 渉 清水 有生 町山 智浩 宮沢 章夫 ANI プチ 鹿島 木俣 冬 山内 マリコ 寺坂 直毅 やまだ ないと

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連続テレビ小説読本 Vol.2 (洋泉社MOOK) 連続テレビ小説 まれ Part1 (NHKドラマ・ガイド) マッサン メモリアルブック (NHKウイークリーステラ臨時増刊4/30号) ぼくらが愛した「カーネーション」 連続テレビ小説 マッサン Part2 (NHKドラマ・ガイド)
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【その他呟き】










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