2020年08月06日

【ドラマ】 刑事コロンボ Columbo 別れのワイン Any Old Port in a Storm



コロンボシリーズで傑作の誉れが高い。

NHKBSプレミアムの「刑事コロンボ ベスト20〜あなたが選ぶ!思い出のコロンボ〜」
で、ファン投票1位でした。(2018年11月)

この先も、人気投票すれば(日本では)いつも本作が1位になるように思います。
( 私は「忘れられたスター」に投票します・笑 )

・犯罪が暴かれなくとも報いを受けている犯人に感情移入する
Donald Pleasenceの吹き替え(中村俊一)が元の声よりも少し気の弱さを感じさせる)
(事が決着したとき目を潤ませる犯人はコロンボでは珍しい)
(犯人は気持ち的にオチている、そうでないと事件はまだ証拠不十分)

・コロンボが犯人を(珍しく)尊重し、気持ちを慮っている
(犯人が褒めたコロンボの努力も、
 コロンボにとってはあくまでも犯人逮捕のためにしたことであり、
 コロンボ自身もそこを褒めてもらったと受け取っていると思いますが、
 コロンボと犯人が心を通わせたように見えること自体が珍しい。)

・印象的な秘書のカレンさん(Julie Harris

・NHK初放送時(1974年)の日本では一般的でなかったワインの蘊蓄が興味ぶかい
 ( この頃は、日本酒を冷蔵庫に保存するようなこともあまり目にしなかったと思う )

そのようなところ、
謎解きの展開も無駄のない秀逸な脚本だと思いますが、
論理だけでなく感情からも観る人に働きかける、
コロンボシリーズの中でも味わいが深い回。

初放映時、子どもの頃に観て、
その含みを受け取ることができたのか、
初めてコロンボが面白いと感じたという記憶がある回です。

子どもにもエイドリアンの心情が伝わったのだから、やっぱり名作。
(カレンさんの怖さが分かったのは大人になってから・笑)


でも、今の私は、エイドリアンという人物に魅力を感じない。
彼は、
ペダンチックで見栄っ張りの鼻もちならない、
経営者としてもそれほどでもない人物に見えるし、
殺害方法も発端は衝動的ながら、
かなり残酷といえるもの。(*1)

また、
コロンボも、
いつもどおり最初から犯人に目をつけているし、
火曜日の天気を知って口笛吹いてるし、
ワインの一夜漬け勉強は犯人の懐に入り込むためだし、
(犯人と一流レストランで会食するところまで持ち込まないといけない)
捜査のためなら窃盗するし、
エイドリアンがそれをチクったらやっぱり問題だろうから、
犯人に優しい、

ああ、興醒めなこと言ってごめんなさい。



■「つまらない理由で結婚する人はたくさんいるわ」



このあたりの、
エイドリアンやカレンの台詞について、
原語と翻訳では
微妙な相違があり、大変興味深い。

「愛情は強制によって生まれるもんじゃないよ、カレン
「たぶんそうね、でも愛がなくても結婚はできるわ
「つまらない理由で結婚する人はたくさんいるわ

You can’t force me into loving you,Karen.
Maybe not. (But) you don’t have to love me to marry me.
Lots of marriages have been built on much less.

カレンの発言、
原語は、愛情の有無の話ですが、
翻訳は、結婚する理由の話になっています。

私は、
カレンのふるまいや発言の内面について、
「つまらない」という原語には登場しない表現を用いた、
翻訳のほうが、より想像が膨らみます。

そして、この翻訳が勝手な一人よがりでもないことには、

「刑務所は結婚より自由かもしれませんな
I guess ,freedom is a purely relative.

最後に、エイドリアンは、原語・翻訳とも、
偽りの結婚をしない「理由」を語っている。

この回が備えている趣を膨らませている吹き替え版だなと感じ入ります。



■小説版


二見書房の小説版(昭和49年11月30日初版)より

(*1)リックの死体


『床の上には、一週間前とほとんど同じ姿勢でリックが倒れていた。苦しんだ様子もなく、縛ったロープもゆるんでいない。失神したままで窒息死したのだろう。死後硬直も解けている。おそらくそんなに死を意識することもなかったに相違ない。』

程なく正気に戻っていたら、恐ろしい目にあっていたということ。


巻末に「コロンボ談義(3)」として、
横溝正史と石上三登志の対談が収録されていて、
大変興味深い話がいくつもあった。

対談が行われたのは、角川映画「犬神家の一族」(昭和51年)が創られる少し前、
書店店頭に多くの横溝著作角川文庫が並び始めた頃でしょうか。
(ブームの頃、書店の文庫コーナーで
 横溝作品が幅1メールほども平積みされていたことがありましたね。)
(対談時に、横溝は既に70歳を超えていますが、大ブームはまだ来ていません。)

石上「金田一耕助の映画は以前あったんですが、最近映画化の話はないんですか。」
横溝「ないですね」
石上は、自分が映画監督だったら「獄門島」を映画にしてみたいと言い、
石坂金田一が生まれる前に、
金田一は、かつての片岡千恵蔵ではなく、
コロンボみたいなタイプの俳優がよいと指摘しています。

・倒叙推理ものの特徴
誰が犯人か、という手法では、犯人の気持ちをはっきり出せない。
倒叙推理ものは、犯人の性格を描写できるところがうらやましい。(横溝)
(倒叙ものは、犯人こそ、主役なんですね)

・倒叙推理ものと1時間余りのテレビ番組との好相性
謎解きでは、最後のなぜ犯罪をしたか納得させる説明と事前の伏線配置が難しい。
(それなりの尺と工夫が必要)
映像作品では、重要な役はスターがやるのだから、配役から犯人を推測できてしまう。
(したがって、倒叙もの1時間1話完結でスターが犯人を演じるスタイルは、
テレビドラマシリーズに向いている。)
(市川監督金田一映画のことを思い出します。
まさしく、配役で犯人がわかると言われましたし、
それを逆手にとった作品(女王蜂)もありました。)

・探偵/警察官は私生活をみせず、
 観る人がイメージを膨らませて、
 親近感を持たせることがシリーズものの原則(石上)

( コロンボ、古畑の私生活はそのとおりですね。
  横溝は、金田一に緑ヶ丘荘の探偵事務所を設定したことを悔いていました・笑 
  私は昔、福家警部補がどんな人か全然わからないと感想を書いたことがありましたが、浅い考えでした・笑。ただ、映像作品にする際は、シリーズものの主要人物としてどんな特性をもたせるかは大変重要になる。)

・シャーロキアンと同じようなファンがコロンボにも出てくると横溝は断言しています。






■DVD





刑事コロンボ各回の覚書

 http://inatt.tokyo/article/475671325.html




posted by inatt at 11:53| Comment(0) | ・感想など・TVドラマ・海外 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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