2021年11月03日

【ドラマ】 おかえりモネ 2021年 (全体の感想)



「綺麗事」は、間違ったことでも、意味のないことでもない




宇田川さんという登場人物を創造したことが凄いと思う。


宇田川さんが何にどう傷ついたのか、
具体的に描かれないからこそ、

宇田川さんと彼に寄り添う菜津さんは「私たち」なのだ。






「生きてきて、何もなかった人なんて、いないでしょ。何かしらの痛みはあるでしょ」


主要登場人物のほぼ全員が内面に「何かしらの痛み」を持っていることが描かれたが、

内田衛(まもる)という登場人物の心の傷が具体的に描かれなかったのは、

この台詞を語るためではないかと思った。







各話の感想
 http://inatt.tokyo/article/484193751.html

その他諸々の感想
 http://inatt.tokyo/article/484134681.html






2021年上期の朝ドラ


■この物語が主張していること


・一度口に出した言葉は、相手の胸に刺さり続ける

 ( だから、逆に「綺麗事」を口にし続ける意味がある )


・「大団円」を避けている

 耕治は亮の船を見にいかない
 
 「解決しない問題」を取り扱っているからではないか。

 だからこそ、

 時間を経ても、何度も、観ることができる作品になっているようにも思う。




■当事者と非当事者


「当事者」「非当事者」と言う言葉が
私も含めて感想で多く使われましたが、

(作り手の皆さんが直接使ったかどうか、
 私は確認していませんが、)

このように人々をふたつに分ける表現は、
この物語の言いたいこととは離れているのかもしれません。



■百音の妹愛


物語では明確には示されていませんが、

百音は他の誰よりも(菅波先生よりも)

未知を大事に思い、その幸せに執着している、

ということを前提にすると、

百音の心情に納得できるところがありました。


( 未知が百音の幼馴染たちと親しいのも、
  同じ歳の友だちができないからではなく・笑、
  小さい頃から百音にくっついて育ってきたからだと
  想像しています。 )


「でも、これは違う」「これで救われる?」と言ったのは、

未知のことも頭にあってのものだと、

(当方の勝手な解釈ですが、)

考えます。


(なのに、「お姉ちゃんは、正しいけど、冷たいよ」と言われてしまう )



■ありきたりにも見える台詞の積み重ね


決め台詞でなく、
ありきたりでも大事なことを語る台詞がさりげなく積み重ねられる


綿密に設計されたヒロインと相手役との距離の変化


凄く考えぬかれたシナリオだなと思います。


この物語は、いつまでも人の心をかき乱す、
恐ろしいお話になっているのかもしれませんが、


2周目に観たら、
ここにも、あそこにも、あの主張に触れられていた、
あの人とあの人との会話が、
のちに
この人とこの人の対話でも繰り返されていた、
とか、
変奏曲のように何度も同じモチーフが奏でられていることに
たくさん気づくように思います。

5年後、10年後でないとわかりませんが、

観るたびに、異なる登場人物の発言に心が留まるような
深いドラマになっているような気もします。

( おかえりモネ・台詞データベースを作って、
  あとで、「傷」とか「痛」とか「信用」とか「水」で抽出して、味わう試み・笑 )


( 朝ドラでは、主人公と主要登場人物たちが
  複数の土地をいったりきたりしなければならないのが、
  作劇上大変で、
  つっこみどころもよく発生しますが、
  本作では、
  東京と気仙沼での別々の対話を同時に描くなど、
  非常に巧緻にできていると思います。

  第78回・第79回、
  ・被災経験についての若者たちの会話
  ・ウェザーニュースでの人の痛みについての会話
  ・白紙の死亡届を前にした気仙沼の大人たち

  
  東京から登米へ1週間おきにやってくるという医者は、
  両方に登場させることが容易で、
  ひとつの発明だと思いました・笑。 )  


( 情報、予測の正しい取り扱いが幸せを導くと語っているが、
  誤解釈やフェイクもこのあと出てくるだろうか。20210820

  仕事の失敗や情報の誤った使い方は、
  このドラマではあえて取り扱っていないようだ。

  意外なことに、
  このドラマは社会のネガティブなことは取り扱わず、
  自然と人間の内面に焦点を当てているようです。 20211103 )


( あるいは、民放ドラマだとありそうな、
  全国ネット気象キャスターとお医者さんの恋愛に
  マスコミがからむ、とか、
  取扱わないと決めたものは
  無視を決め込んでいる脚本だと思いました。20210914)






150回として設計した物語を120回に縮めようとして、
いろいろご苦労されているのかな、

と勝手に思うところがありました。


菅モネの描写にはあまり不足を感じないものの・笑、

震災や気仙沼の人たちや仕事ものとしての描写は、
描こうとおもっていたところを少しずつ削っているところが
あるのかもしれません。


30回の短縮は6週分ですから、
登米と気仙沼と東京それぞれに
2週分のストーリーを加えることのできるほどの分量です。


作り手のみなさんが
見直しを迫られたことは
大小たくさんあったのではないでしょうか。


■ナレーションの設定


どういう考え、経緯があったのか、

あまりうまくいってないと思うのですが、

第119回での語りのために、

絶対に必要な人物として設定されているのだと思います。


「忘れないって大事だけど、苦しい。だからときどき忘れて、笑ってね」





■永浦百音の人物造形と清原果耶の演技


主人公ではなく周りの人物が重要な台詞を語り、
ヒロインの受けの芝居がとても多い本作。

清原果耶の瞳の動きのみで見せたりするような演技が

無表情と評価されていることがある。

・動揺して瞳が揺れる

・瞳の動きだけで、菅波先生に視線を一度は送り、そして、はずす

・下唇だけが微かに震える


しかし、永浦百音という役柄はとても変わっている、

ヘンだ、といってもいい。

内面が想像しづらいから、共感しにくい人物造形、

幼いのか老生しているのか、
純粋無垢か潜在的にあざとい猫かぶりなのか



清原果耶は、

そのどれとも言えないという、

微妙な綱渡りな演技を続けているようにも見え、


加えて、

地元に貢献したいという気持ちを持ち続けながら、

何もできないからいったん土地を離れたいとか、

東京でもっといろんな仕事を続けたいとか、

相反する思いを同時に抱えていることも表現し、


「そんな人はいるわけない、見たことない」

と感じてしまいそうな人物像を成立させている。


それでなくとも、根が内省的で理性が強いという、

どこにもいそうにないキャラクターに共感は得られにくいのか、

苛々する人も多くいるようだ。


しかし、

大災害が頻発する国で産まれ、生きながら、
自分自身は大災害を直接経験していない、
という、
私も含まれる、
大多数の人々のひとりとして
創り出された登場人物かもしれないと
思った。(20210902)


また、
物語の主人公は、百音だけど、
特別な狂言回しで、

ほんの僅かだけど前に進もうとする、菜津さん、宇田川さん、
何か地元に貢献しようとする、三生、悠人を
大事に描こうと思っているのかもしれない、
とも思うこともあります。



ーーーー








■音楽と絵画



■仕事についての多面的な描写

・朝岡はチーム鮫島の仕事は「個人的なリベンジ」だと。

・全国放送に出続けている信用



■登場人物の名づけ

登場人物の姓名には作者の思いが含められているものがあるのかも。



あとは、
朝岡覚(あさおか さとる)
とか
鮫島祐希(さめじま ゆうき)
とか。

後藤三生(みつお)

三生(さんしょう) 仏語。前生・今生・後生の三つ。三世 (さんぜ) 。
https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E4%B8%89%E7%94%9F/


神野マリアンナ莉子(じんの まりあんな りこ)
というのも、
登場人物のキャラクターの説明として、
面白い名づけだと思った。

ところが、
神野さんが「利己」から覚醒すると、
「神野マリアンナ」の印象がまた変わることに感嘆した。(第85回)



■「やじろべえみたいな正しさ」

私たちが仕事をするのは、
自分の大切な人のためか、
それとも
顔の見えない不特定多数の人たちのためか、
私たちは日々その葛藤を抱えながら闘っているんです。
(第50回)

人の役に立ちたいとかって、結局、自分のためなんじゃん
(第57回)

災害は繰り返される、いつかきっと命が危うくなる
そんなことばかり伝えていれば人は疲れ果てて動けなくなってしまう
大事にしてきたことは大事なんです
それを失うような忠告では誰も行動しない
(第70回)

何で地元で頑張っているのが偉いみたいになるの?
(第77回)








posted by inatt at 20:06| Comment(0) | ・感想など・TVドラマ・NHK | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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