2022年07月15日

【ドラマ】 星新一の不思議な不思議な短編ドラマ 2022年



星新一作品を原作としたNHKのドラマ

ホームページでは、

「あの時の”未来”を生きる私たちへ」
という副題がついている。

確かに、
60年も前に執筆された近未来表現を
今どのように映像化するのかという論点。

ただ、表現の仕方が変わっても、
作品の主張したい趣旨自体はほぼそのままに通用しているところが
大変に興味深い

いくつかの原作は15分のドラマにするには少し短く、
作り手がどんな要素を加えるかがポイントになっている場合もあるようだ。

いくつかの作品では、
原作を超えた素晴らしさや
映像ならではの説得力を感じました。

また、原作との比較により、
原作が、表立って何かをことさらに主張するようにみえないように
意識して作られていると感じさせられました。


■生活維持省

このシチュエーションの何をブラックととるかの解釈が重要だと思う。
・この世界のルール?、人々の態度?、主人公の真意?

本作とマンガ「イキガミ」では主張したいところは必ずしも同じではないと思う。


■見失った表情

顔の造形と表情は別という
着眼点が原作の凄さだと思う。

( 美容整形への皮肉が根本なのか、どうか)


綺麗なだけじゃだめなの、
誰かに肯定されたい、
と思い詰めている主人公

コンタクトレンズによる機械操作、
( 登場人物の意思の視覚化 )
ワイヤレスイヤホンによる音楽、
( 当事者同士だけが共有している音楽 )
自分の顔を確認するとき鏡ではなくスマホのカメラ、
原作(初出1961年)にない機械を上手に小道具にして、

原作では「泣き方」なんだけど、
本作では「笑い方」が
生身の俳優さんの演技でとても魅力的だった。

(小説では「泣き方」で、映像では「笑い方」になるところが興味ぶかい。
 物語が動く因果もあちこち異なっている。)

石橋静河さんの最後の方のお芝居は個人的には初めて観た思いで、
相当に惹きつけられました。

・顔の造形や表情だけでなく、
 身体の動作・踊り、好きなもの(音楽)とか、
 その人らしいもので分かり合える。


脚本・演出 菅井祐介


■白い服の男

「戦争」とは、行動や主義ではなく、一種の「心持ち」なのかも、
とは、原作を読んで思ったことですが、
本作でも同じことを感じました。

「〇〇こそ唯一絶対の道なのだ」

原作(初出1968年)では、
「私」が署長で「白い服の男」で、
文字により、白、青、ハトなどで伝えようとしていることがあり、
「私」のモノローグで話が進むことに対し、

本作が映像・音楽・音でどのように観せようとしているかの相違が興味深い。


( 「最後の銃弾は誰が誰を撃ったのか」
  「星新一はベトナム戦争中に平和主義をあてこすっている」
   などの呟きを目にしました。 )


本作では、
2022年に創る意味、
現在、2022年に我々の周りで起こっていることに繋がる描写が
何か含まれていればよいのかもしれません。


■ものぐさ太郎


初出1970年で、星新一はオレオレ詐欺を予言している?

もしくは、電話(やメールなど)の利器をものぐさと皮肉っている?



■夜と酒と

彼は「好ましくない循環に巻き込まれた」のか、
自分からその流れに進んでいるのか。


( きつねどん兵衛を部屋で食べてると可愛いどんぎつねさんが相手してくれるのも
  ホントはヤバイ話なのか?・笑 )



■ずれ

原作(初出1960年)とは語る順番が違うというか、
本作では映像作品におけるカットバックの面白さになっていて、
映像化するともっと面白くできる可能性がある原作なのだなと承知しました。

原作をもとに、絵コンテを切ってみなさい、みたいな課題制作ができるのかも。

もしかしたら、若い人は、何故、シューター・サービスという名前なのか、

ぴんとこないのではないか。

今なら、何と名付けるべきなのか、ええと、ええと、

まずは君が落ちつけ

( 国会議事堂では、現在でも現役のメールシューターがある )



■もてなし

わざわざ、中村優子さんが出張ってきてるから、
残念ながら、マジもん・笑

( 浅野和之さんの独特な悪魔感・笑、
  いや、お話次第で、
  ちんぴらにも俗物にも何にでも見える、
  格別な演技 )

宗教とは何か、

見返りを期待する「徳」に隠れる醜怪。


( 宗教について、考えさせられているときでした。
  20220708 安倍晋三銃撃事件  
  20220719 放送 )

( 個人的には、
  文章である原作よりも、
  映像・演技により、いろいろなことを受取れるものになっていると
  感じました。
  宗教やカルトを論じるときに、
  このドラマを観てから話し合うといい。 )


■鍵


この寓話が示すものは何だろう。

映像のほうが、情緒に訴えてくる力が強いことが印象的。


ーーー


おそらく、原作のとおり映像化すると、

その状況は変だと観る人は思うだろう。

本作の示しているものが、
(「夢のない男」のお話」)

原作と意図と同じであるなら、

とても上手に修正して映像化している。


原作は、

もっと複合的にいろんな寓意を含ませているようにも思う。

1967年初出の短編が、何十年も嚙み締め続けることのできる内容を含んでいることに驚嘆する。

(子供の頃、読んでも、そこまでくみ取れなかったけれど)




ーーー

夢、目的、探してもみつからない

目的と手段

道端で拾うもの
人生に携えるもの

答えを探す行為

答えを作ってしまう行為。

その鍵を用いる方法。


■買収に応じます

数年前にLIFE!で観た。(嘘)

毎年お金を払い続けると、
永遠に生きていくことができるのだろうか・笑

原作は、小噺に近いような短編なので、
そこに何を加えるかで、
受け取るものは変わってくると思う。

本作では、「つもり預金」を持ってきているので、
やりたいことをやらないことでお金に換え、
それを寿命に代えることの意味を描いているのかとも思いきや、
それで地球温暖化防止に役立っているのなら、
それでいいようにも思う・笑。





・ホシヅル図書館
 https://www.hoshishinichi.com/list/


posted by inatt at 13:50| Comment(0) | ・感想など・TVドラマ・NHK | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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