今の私は、
「ご苦労様」は、
新人社員相手ぐらいにしか使わないと思います。
いや、それでも、いったん書いても、「お疲れ様」に書き直すだろう。
1976年に三木首相が、
1986年に中曽根首相が、
公式行事式辞で、
「陛下、本当に御苦労様でございました。」という表現を使ったということを聞きました。
ただ、
非常に特殊な文脈のなかでの文例だと思った。
( 特別に偉い方の、心労・労苦・辛苦について、
万人が異議をはさむ余地がない前提で使う、
「ほんとうに」をあえて加えておく、
御苦労様であり、他の候補があるのかというと思いつかない、
という状況の文例でした。
お疲れさまでした、では軽くて、確かに不敬感があり、
ありがとうございましたとかだと、崇めすぎている感がある。 )
昭和天皇の在位記念式典で、当時の首相が式辞として述べた文面。この〈御苦労様でございました〉は、担当の多くの役人、首相本人が違和感なしと判断し、式典で読まれたわけです。20世紀末まではこれが普通の感覚でした。以前、私は間接的な情報しか示せなかったので、改めて投稿しておきます。 pic.twitter.com/HNbu4CZyzJ
— 飯間浩明 (@IIMA_Hiroaki) May 3, 2024
公平を期して言うと、式典当時も「『ご苦労さま』は目上に使わないものだ」という反応がありました。「昔は目上が目下に使った」という説も出されました(この説は、後に研究者によって否定されています)。それでも、在位50年の式典の文言が、在位60年で踏襲される程度には違和感のない言い方でした。
— 飯間浩明 (@IIMA_Hiroaki) May 3, 2024
補足しますと、では「お疲れさまでした」は不敬なのかというと、そうではありません。このことは上皇さまの退位の時に少し話題になりました。「お疲れさま」は現代では目上をねぎらう一般的なことばになっていますが、昭和時代には「ご苦労さま」がふさわしい場合が今よりも多かったという話です。
— 飯間浩明 (@IIMA_Hiroaki) May 3, 2024
言葉ってホントに難しい。
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