「駄々をこねずに、聞きなさい、ロージー」
「スターとはね、不思議なものなんだ。
それは何というか、
奇妙な恍惚と自己顕示欲を満足させてくれる。
これをうまくさばけるのは、ごくわずかな人しかいないんだ。
かわいそうに、グレースにはそれができなかった。
(溜息)
彼女は確かに野心がありすぎた」
「ねえ、どうしてそんなことをしたの、どうして」
「君のためさ、君のためだよ、君のね」
【一番好きなコロンボ作品】
私が一番好きなコロンボのエピソード。
脚本も演出も演技もとても好い。
何故好きか、ということを一言で説明することは
あんまり意味がないとは思いますが、
興味を持っていただくための説明としては、
コロンボ全作品のなかで唯一、
コロンボが犯人に罪を認めさせることができなかった事件、
といえるかと思います。
( 2355のトビハゼのトビーも本作のジャネットリーが好きだと言ってました。20230216 )
Directed by HARVEY HART ( ハーベイ・ハート )
Written by BILL DRISKILL ( ビル・ドリスキル )
( https://www.imdb.com/title/tt0072803/ )
・グレースが帰宅して、今夜の愉しさを身体で反芻したあと2階を見上げる表情にひやりとした気分になります。
・ウィリス博士も、コロンボと同じく、映画の中のグレースのファンだったのでしょう。その役名はローズメリー・ランドン。
・ネッドが図らずも犯人の心情を説明している。一番の理解者だから。
・謎ときは犯人の前では行われない。ホームシアターで小声で推理が語られる場面は陰翳があり印象的です。
・コロンボに抗議するグレースの顔にかかる映写機の光。
・グレースを座らせ、お別れに頬に接吻するネッド、ふたりをみつめるコロンボ。
・「自己顕示欲」と「君のため」
・最後のカット「奇妙な恍惚と自己顕示欲」
一方、
・ウィリス博士は、テレビでのグレースの発言を見たとき、もっと深刻な顔をするはずではないかと思う。ましてやその直後に「ふざけた本」など読む気にならないはず。あるいは(医者としての非情な判断で)絶対カムバックできないと確信している。
・コロンボが相手の業績や人気を褒めても、大方、口だけと思って見ていますが・笑
ウィラー/ダイヤモンドコンビの映画がコロンボ夫妻の思い出なのは本当のことと、
コロンボの表情から感じました。(だからといって、捜査に手心が入ることはない)
【最後の台詞】
1977年1月3日がNHK初放映だそうですが、(wiki)
その時、
最後の2つの台詞に衝撃を受けたことをよく覚えている。
「頑張ってみせる、二か月間(ふたつきかん)は」
「そう、それがいいね」
小池朝雄はもちろん、
小林昭二(こばやしあきじ)の吹き替えがかっこいい。
(ウルトラマン世代の私にとって思い入れのある俳優さんです)
DVDで字幕でも観て気づきましたのは、
このふたつの台詞は、原語では、
"(It) might take a couple of months.
"Yes.Yes,it might.
なので、「頑張る」「(がんばって)みせる」とは言っていないのです。
吹き替えでは、
グレースのために2か月もたせてみせる、
頑張るとネッドの意志を表に出した発言に対し、
( 彼は、事件当夜のことをホントは何も知らないのに、
コロンボが彼に語ったもろもろの情報をもとに、
「2か月、頑張る」のだ。 )
コロンボは、
その行動は(彼にとっても、グレースにとっても)それがいいんだろうね、
と彼の意志を認めている、と私は受け取りました。
ネッドの発言が意訳されたので、
コロンボの言う、
「それ」の指すものが
「2か月」から「頑張る」に変わったわけです。
また、
それ「が」いいね、と言っていて、
それ「も」いいね、なら、ニュアンスが変わります。
原語では、
コロンボの職業意識は、真犯人を挙げることしか興味はなく、
わざわざ自分から真犯人の逮捕を遅らせることなど考えていないと思います。
( 犯人に対して同情したり配慮したりする気は全然ないですよね、
どうやって警察に連れていくつもりだったのか )
だから、
真犯人でない人の主張に付き合うのは茶番でしかないけど、
ネッドが、
( すぐひっくり返される? それは違う、)2か月かかると自分は思う、と言ったことを、
コロンボが
(そうか、なるほど、あなたはそういうつもりなんですね、
あんたなら他の人とは違う、)
2か月かかるね、
(それはそれで仕方がない)
と冷静な状況判断として受け止めた、思いました。
( 少し私の想い入れ眼鏡がかかってますけど・笑
ピーターフォークの仕草や表情は同じでも、台詞や喋りの間の違いで、
ニュアンスに差異が出ることが大変興味深い。)
( 吹き替えの台詞は、額田やえ子台本とも異なっているというブログを読みました。
https://blog.goo.ne.jp/zon-be/e/51a0d0196da1c6fdb01d8b059cf07cfd )
直訳では、
当時のお茶の間の視聴者に伝わらないかもしれない、
という判断があったと思いますが、
オリジナルを勝手に変えすぎることなく、
観ている人に好いシーンを届ける、
吹き替え版の素晴らしい仕事。
作品が発している、
複合的な主張の重心が
言葉、声質、語りの間のちょっとした違いで、
微妙に変わっていくんだなということを
コロンボの吹き替えでしばしば感じます。
(また、
子供の頃から、海外の映画・ドラマを
吹き替えでたくさん親しんできて、
今、私にとって一番心に残っている吹替の台詞は
本作の
「君のためさ、君のためだよ、君のね」です。
原語では、
"For you,Grace...For you,Grace.For you. ですが、
私は、
吹き替えのほうがずっと好い。
3つめの"for you"をジョンペインは苦渋をもって口にしている
ように、私には思えます
小林昭二は「君のため」という「意志」を強調しているように
感じます。)
【執事レイモンド】
端役の警官も含めて登場人物が皆、印象的な本作ですが、
特に執事夫妻、レイモンドとアーマのおふたりが、
本作の雰囲気を好いものにしています。
コロンボがコーヒーをこぼさないか気にする、
コロンボに灰皿持ってついてまわる、
など、
部屋で銃を撃っても執事が気づかない、
広いお屋敷を隅々まで常に綺麗にしているんでしょうね。
演技も面白く、
帰るのかと思ったらもう一度2階に上がるコロンボを見つめて、
苦虫を噛み潰しています・笑。
心から誠実に雇い主に仕えているような彼らの描写が、
ウィリス夫妻の以前の穏やかな生活を想像させます。
#刑事コロンボ の一番好きなエピソード、#忘れられたスター
— inatt (@inatt) November 4, 2020
執事夫婦が好い。
あの後も、
ふたりで、それまでと変わらず、
グレースのお世話を続けたんでしょうね・哀。
ご主人に精一杯仕えたふたりが、
もう少ししたら失業するとは同情を禁じ得ません。
ウィリス博士の遺言のなかに、
彼らに遺贈される財産があるとよいのですけれど。
【あなたのあの自動車事故】
グレース・ウィラー(ジャネット・リー)とネッド・ダイヤモンド(ジョン・ペイン)が、
どんなスターで、どんなコンビで、どのような人生を送ってきたか、
とても少ない情報しかありませんが、
「あなたのあの自動車事故(*1)以来、私は駄目になった。人気絶頂でこれからという時に」
「あなた抜きでは誰も雇ってくれなかった(*2)」
とネッドに語るグレース、
何かしら戸惑いも見せながら、
「(あの頃、結婚したいと思っていたし)今も同じ気持ちだ」
と断言するも、
と複雑に表情が揺れるネッド。
短いシーンなのにいろいろに想像を掻き立てられます。
私は、
ネッドにとって、グレースは、
人生で最も愛した大事な人であることには間違いないが、
昔と同じような熱さを変わらず持ち続けているかというと
今は、微妙に違う想いが混じっている、
というような複雑な感情を持っているように
思いました。
ネッドは、
グレースのカムバックの意義や成功の見込みについて、
グレースとまったく同じ感触は持っていないことを
表情や発言でしばしば示しています。
売れっ子だった頃の関係性や、
ネッドの飲酒運転?による交通事故の経緯など、
ふたりには深い紆余曲折がありそうです。
最後のネッドの選択は、
( 描かれていない、
ふたりの長い歳月の物語を背景にして、 )
非常に複雑な、
苦渋もまじった感情を抱えながらのものであったことを
ジョンペインの演技は表現しているように思えます。
( 一方、
小林昭二の吹替は、
もっときっぱりとした意思を表現していると感じます )
ネッドは、(今生の別れとなる)グレースへの最後の言葉として、
( 君を愛している、とかではなく、)
ロージーを見てなさい、君の大好きなロージーをね。
You watch rosie,just watch rosie.
としか、言うことができなかった。
( 逆に言うと、
グレースは、ネッドを見ているのではなく、
ロージーを見ている )
グレースに「どうしてそんなことをしたの」と問われ、
ネッドは「君のためだよ」と答えた。
ネッドこそ、心のうちで、
「どうしてそんなことをした」
という思いがあるだろうが、
ネッドは
グレースが彼のためにそれをしたわけではないことを
分っている。
(*1) that stupid driving accident and your foolish drinking
(*2) No one would hire Wheeler without Diamond.
( 物語で描かれたこと以外にも、
グレースとウィリス博士の馴れ初めや、
グレースが再び野心を持つに至った流れも、
それぞれ興味深い物語があるのかも。 )
【グレースの「寝落ち」】
Twitterでの感想を見ていて、
推理の論理に「寝落ち」などの可能性という穴がある、
という指摘に、なるほど、と思いました。
でも、
脚本がそれに触れていなくても、
彼女はこの映画ではそんなことはしないのでは、
と感じさせるお話になっているとは思いました。
犯人の殺意は本心からのもの、という指摘も
どきっとしました。
そのような酷薄な自分勝手に思える人が見せた幕切れの微笑み。
【射撃訓練】
射撃訓練のエピソードは、コミックリリーフであるだけなく、
「身代わり」の「共感」のためにあるようにも思えます。
本作の脚本、演出には細かい仕掛けを感じます。
コロンボの飼い犬も必要があって登場させてますよね。
【Walking My Baby Back Home】
映画ウォーキングマイベイビーは、ジャネットリンが実際に出演した、
1953年の映画 Walking My Baby Back Home だそうです。
https://www.imdb.com/title/tt0046531/
https://www.youtube.com/results?search_query=walking+my+baby+back+home+
【ジョンペイン】
ネッドを演じたJohn Payneの他の作品を私は勉強不足で観たことがないのですが、
IMDBを見ると、本作は最後の出演作なのでしょうか。
"It might take a couple of months."
が、キャリアで「最後の台詞」だったのでしょうか。
私にとっては、本作一作だけで、忘れられない俳優さんになりました。
https://www.imdb.com/name/nm0668361/
【SPEAK LOW】
グレースとネッドがパーティで披露したのは、「SPEAK LOW」という曲だそうです。
【SPEAK LOW】は元々ブロードウェイ・ミュージカル「ヴィーナスの接吻」(ONE TOUCH OF VENUS)のために書かれた曲。あの稽古はこのミュージカルのためだったのね。jazz musicianもよく演奏します。#刑事コロンボ#忘れられたスターhttps://t.co/14rKWOM9Ay
— Dan (@funkykazoo) November 4, 2020
【ザ・トゥナイト・ショー】
「恐怖の高層ビル」と「大豪華船沈没」とは「タワーリング・インフェルノ」と「ポセイドン・アドベンチャー」。つまり事件当夜のジョニー・カースン・ショウはプロデューサのアーウィン・アレンがゲストだったのだ。(間違えてラウレンティスって書いちゃった)#忘れられたスター #刑事コロンボ pic.twitter.com/LFERT9Dk7v
— フォルスタッフの数字 (@canceledsinx) November 4, 2020
【ザイアス博士】
『#刑事コロンボ』
— T@k@$h! (@takaprin) November 4, 2020
「#忘れられたスター」
グレース・ウィラー(#ジャネット・リー)の執事レイモンド。演ずるは #モーリス・エヴァンス。
『#猿の惑星』のザイアス博士❗
過去のエピソードに #ロディ・マクドウォール 、#キム・ハンター も出演してましたよね。#ピーター・フォーク pic.twitter.com/IkNQAZkPvL
【フジテレビドラマ「黒井戸殺し」】
20180414に放送された、フジテレビの「黒井戸殺し」を観て、
しばらく忘れていた本作のことを思い出し、
DVDを取り寄せて観て、
このドラマの魅力を再確認することができました。
「忘れられたスター」は
— 町田暁雄 (@fishcurry1963) November 5, 2020
NHK放映時にカットされた箇所への追加吹き替え(声が変わる部分)が多いエピソードです。
同人誌《COLUMBO! COLUMBO!》vol.6より#刑事コロンボ pic.twitter.com/BPVur7MbFq
一時コロンボを見返すのがキツくなっていたことがあって、放映時カットされた部分を別声優で補完しているのが感興をそいだ。ところがこの回ではそのおかげで本筋に関係ない「射撃試験を逃げ回るコロンボ」をわざわざ残して、ほかを小刻みにカットしていることがわかった。日本語版制作陣の姿勢が知れる
— 芦辺 拓 (@ashibetaku) December 7, 2023
#刑事コロンボ追加吹替キャスト
— えのころ工房◎ホームズとワトスンLINEスタンプ販売中 (@enokoro1999) April 30, 2022
■忘れられたスター
コロンボ警部…銀河万丈
グレース・ウィラー・ウイリス…幸田直子
ネッド・ダイヤモンド…斉藤志郎
ローリング[若い男性ダンサー]…村山明
パット[振付師]…榎本智恵子
ウエストラム医師…北村弘一
書店員…田原アルノ
『刑事コロンボ』史上
— 町田暁雄 (@fishcurry1963) January 6, 2024
痛恨の撮影/編集ミス5つのうちの1つは
「忘れられたスター」のこれでありましょう。
「お入り」のカットです。 pic.twitter.com/jqaoNvaoUQ
刑事コロンボ Columbo 各話の感想
http://inatt.tokyo/article/475671325.html
刑事コロンボ傑作選 5時30分の目撃者/忘れられたスター [DVD]

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